最近、不動産会社の経営者の方とお話しする機会が続いていて、そのたびに同じような悩みを耳にします。
「求人サイトに載せているのに、なぜか応募が来ない」 「やっと来てくれたと思っても、数ヶ月で辞めてしまう」
正直なところ、私自身もこの問題に何度も頭を悩ませてきました。今日は、そんな中で感じてきたことを、少し個人的な視点も交えながら書いてみたいと思います。
応募が来ないのは、求人票のせいだけじゃないのかもしれない
最初の頃は、求人の書き方が悪いのかなと思っていました。写真を変えてみたり、給与の見せ方を工夫してみたり。もちろんそれも大事なのですが、ある時ふと気づいたんです。
応募が来ない本当の理由は、もしかすると「入ってからの働き方」そのものにあるのではないか、と。
不動産営業のお仕事って、外から見ている以上にやることが多いんですよね。内見の同行はもちろん、契約書類の作成、反響対応、物件情報の入力……。営業のはずなのに、営業以外の作業に追われている。そんな声を、現場の方からよく聞きます。
こうした忙しさは、求人票には書かれません。でも今は口コミサイトやSNSで、働く人のリアルな声が思った以上に広がってしまう時代です。「大変そう」という空気は、意外なところから伝わっているのかもしれません。
採用を頑張るほど、疲れてしまうという矛盾
これは私が実際に見てきた中で、ちょっと切ないなと感じることなのですが。
採用に力を入れて、ようやく新しい方が入ってくれたとします。でも、既存の社員さんたちの忙しさが変わらないままだと、新人さんの教育に十分な時間を割けないんですよね。結果として、新人さんは「何をどうすればいいのか分からない」まま現場に放り出されてしまう。
不動産営業は覚えることが本当に多い仕事です。物件の知識、書類の書き方、顧客対応の勘所……。それを誰も丁寧に教えてあげられないまま、気づけば辞めてしまっている。採用を頑張れば頑張るほど、現場が疲弊していくという、なんとも言えない矛盾を感じることがあります。
だからこそ最近は、「採用を増やす」ことと同じくらい、「今いる人たちの負担を減らす」ことが大切なんじゃないかと、個人的には思うようになりました。
属人化した仕事が、実はいちばんのボトルネックかもしれない
いろいろな不動産会社さんのお話を伺っていて、共通しているなと感じるのが「あの人にしかできない仕事」がとても多いということです。
- 反響メールへの返信文
- 物件情報のポータルサイトへの入力
- 重要事項説明書などの書類作成
- お客様ごとの対応履歴の管理
こういった仕事、本当はマニュアルやツールがあれば、経験の浅い方でも一定の対応ができるはずなんです。でも現場では「ベテランさんの感覚」に頼りきりになっていることが多くて、それが結果的に、忙しさの偏りや人手不足につながっているように感じます。
そこでAIが、意外と役に立つのではという話
ここからは少し、私が個人的に「これはいいかもしれない」と感じている話です。
生成AIって、こういう定型的で、でも属人化しがちな業務との相性が思っていたよりずっと良いんですよね。反響メールの返信文の下書きを作ってもらったり、物件紹介文のたたき台を出してもらったり。ベテランさんが一件ずつ手作業でやっていたことを、AIがまず下書きしてくれて、人は最後の確認だけをする。
そんな流れに変えるだけでも、現場の空気って結構変わるものだなと感じています。
実際にやってみて感じたこと
反響対応が、少し楽になった
問い合わせへの返信スピードって、成約に関わる大事な部分ですよね。でも担当の方が接客中だったり、外に出ていたりすることは日常的にあります。
AIに下書きを作ってもらい、内容を確認してから送るという形にするだけで、新人さんでもある程度の品質を保った返信ができるようになります。教える側の負担も、思っていたより軽くなった気がします。
文章を書くのが苦手な人も、動きやすくなった
物件の紹介文やチラシの文章って、実はセンスや経験が必要とされる仕事です。AIに物件の特徴を伝えるだけで、いくつか文章の案を出してくれるので、文章を書くのが得意でない方でも、一定のクオリティのものを作れるようになります。
特定の誰かに仕事が集中する状況が、少しずつ和らいでいく感覚があります。
「聞ける人がいない」が減った
新人さんが「わからないことを聞ける人がいない」というのは、離職の大きな原因のひとつだと感じています。社内マニュアルをAIチャットとつなげておくと、よくある質問にAIがすぐに答えてくれるようになります。
ベテランさんが同じ質問に何度も答える手間が減るだけでなく、新人さんも気兼ねなく質問できるようになる。この変化は、思っていた以上に大きかったです。
それでも、気をつけたいなと思うこと
とはいえ、AIを入れれば全部解決、というわけではないんですよね。導入して終わりではなく、現場でどう使われているかを見続けることが大事だなと感じています。
特に、AIが作った文章をそのまま送ってしまうのではなく、必ず人が目を通す流れにすること。不動産の取引は金額も大きく、正確さが求められる場面も多いので、最終的な責任の所在はきちんとしておきたいところです。
それから、いきなり全部の業務にAIを入れようとすると、現場が混乱してしまいます。まずは反響対応や書類作成など、効果を感じやすいところから少しずつ始めて、慣れてきたら範囲を広げていく。そんな進め方が、現実的なのかなと思っています。
おわりに
「求人を出しても応募が来ない」という悩みの裏側には、業界のイメージだけでなく、今いる社員さんたちの忙しさという、もっと根っこの部分の問題があるのかもしれません。
採用活動を頑張ることも大事ですが、それと同じくらい、属人化してしまっている業務を見直して、AIの力を少し借りてみる。そんな小さな一歩が、結果的には働きやすい職場づくりや、人手不足の解消につながっていくのではないかと、最近はそんなふうに感じています。
もし同じような悩みを抱えている方がいたら、まずは「あの人にしかできない仕事」がどこにあるか、少し棚卸ししてみるところから始めてみるのもいいかもしれません。

